アスベストがもたらす健康被害とは?症状・潜伏期間・予防策を詳しく解説
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コラム
アスベストがもたらす健康被害とは?症状・潜伏期間・予防策を詳しく解説

1.なぜアスベストは危険なのか
アスベストの繊維は髪の毛の数千分の一ほどの細さで、空気中に浮遊しやすく、吸い込むと肺の奥深くまで入り込みます。
体内では分解・排出されにくく、長年にわたって慢性的な炎症を起こし、細胞のDNAを傷つけることが病気の原因と考えられています。
2.主な健康被害
石綿肺(アスベスト肺)
長年の吸入により肺が線維化し、呼吸がしにくくなる病気。
初期は息切れや咳が出る程度ですが、進行すると慢性的な呼吸困難に。
潜伏期間:15〜20年程度。
肺がん
アスベストを多く吸入した人に発症リスクが高く、喫煙との相乗効果もあります。
潜伏期間:15〜40年。
初期症状が出にくく、発見が遅れやすいのが特徴。
悪性中皮腫
胸膜・腹膜・心膜などを覆う膜に発生するがん。
特にアスベストとの因果関係が明確。
潜伏期間は最長50年にも及び、症状が出た時点で進行していることが多い。
主な症状:胸の痛み、息苦しさ、体重減少、咳など。
3.アスベストの種類ごとに異なる健康リスク
アスベストは大きく「蛇紋石族」と「角閃石族」に分類され、それぞれの種類によって繊維の形状・耐久性・体内残留時間が異なります。
そのため、健康被害の強さにも差が生じます。
1. クリソタイル(白石綿)
世界で最も多く使用されたアスベストで、建材やブレーキ材など幅広い用途に使われました。
繊維が柔らかく加工しやすい反面、吸入を繰り返すと肺がんや悪性中皮腫を引き起こす可能性があります。
角閃石族より毒性は低いとされますが、安全とは言えません。
2. クロシドライト(青石綿)
非常に細くて硬い繊維を持ち、体内に長く残留する性質があります。
吹付け断熱材や高圧管などに使用されてきましたが、6種類の中でも最も発がん性が高いと評価されています。
少量でも中皮腫を発症するリスクがあり、特に危険視されています。
3. アモサイト(茶石綿)
耐熱性に優れ、保温材・断熱材として多用されました。
角閃石族のため発がん性が高く、クリソタイルより中皮腫や肺がんの発症率が高いことが報告されています。
除去作業時には粉じんが飛散しやすく、湿潤化や封じ込めなどの安全対策が欠かせません。
4. トレモライト
滑石(タルク)や蛭石などの天然鉱物に不純物として混入することがあるアスベストです。
化粧品や建材への混入事例もあり、発がん性は高めとされています。
長期間吸入すると肺がんや中皮腫を発症するおそれがあります。
5. アクチノライト
鉄を多く含む緑色の石綿で、使用例は比較的少ないものの、自然界に混在することが多い種類です。
吸入によって肺線維化や胸膜肥厚などの症状が報告されています。
6. アンソフィライト
滑石や蛭石などの鉱物に不純物として含まれるタイプで、日本では熊本県旧松橋町に小規模な鉱山が確認されています。
国内での使用は限定的ですが、中皮腫との関連性が指摘されています。
種類にかかわらず共通すること
アスベストの種類がどれであっても、長期間の吸入は深刻な健康被害をもたらします。
4.どんな人が注意すべきか
過去に建設・造船・断熱工事などに従事していた人
1980年代以前に建てられた建物の解体・改修作業に関わる人
家族がアスベスト関連の仕事に就いていた(衣服などを通じた家庭内曝露)
5.健康被害の補償制度
石綿健康被害救済法による補償制度があり、医療費や特別遺族給付金が支給される場合があります。
環境再生保全機構が申請を受け付けています。
労働者の場合は、労災保険による補償も対象になります。
6.被害を防ぐためにできること
アスベストは、知らないうちに吸い込むことで健康被害をもたらすおそれがあります。
そのため、工事の際は次の点を徹底しましょう。
●専門業者による事前調査で、アスベストの有無を確認する
●作業中は湿潤化・封じ込めで粉じんを飛ばさない
●防じんマスク・保護具を着用し、吸入を防ぐ
また、定期的な健康診断で早期発見に努めることも大切です。
まとめ
アスベストによる健康被害は、吸い込んでから症状が出るまで数十年かかる「静かな公害」です。
過去の使用による被害は今も続いており、正しい知識と予防意識を持つことが何より大切です。
建物の安全管理と健康チェックを怠らず、次世代へ安全な環境を引き継ぎましょう。




