アスベスト（石綿）は、天然に存在する鉱物繊維の総称です。
非常に細い繊維でできており、耐熱性・耐摩耗性・耐薬品性・絶縁性などに優れています。
この高い性能から、20世紀中盤以降は建築資材や工業製品など、幅広い分野で利用されてきました。

しかし、微細な繊維を吸い込むと肺の奥深くに入り込み、長い潜伏期間を経て深刻な健康被害を引き起こすことが判明。
そのため、現在では日本をはじめ多くの国で製造・使用が禁止されています。

アスベストは大きく「蛇紋石族」と「角閃石族」の2つに分類され、全部で6種類が存在します。

アスベストは安価で扱いやすく、さまざまな建材や工業製品に使用されていました。

特に耐火・断熱・防音・絶縁の目的で、以下のような場所に多く使われています。

• 吹付け材（耐火・断熱目的）
• スレート屋根・外壁材
• セメント板（内装・外装用）
• ビニル床タイル
• 配管設備のパッキン・ガスケット など

古い建物（おおむね1980年代以前に建築されたもの）では、今も石綿含有建材が残っている可能性があります。

アスベストを吸い込むと、長期間体内にとどまり、肺や胸膜などにダメージを与えます。
発症まで数十年を要することが多く、主な疾患は次の通りです。

石綿肺（アスベスト肺）
長年の吸入により肺が線維化し、呼吸がしにくくなる病気。潜伏期間は15〜20年ほど。

肺がん
アスベスト曝露から15〜40年後に発症することがあります。ばく露量が多いほどリスクが高まります。

悪性中皮腫
肺を覆う胸膜や腹膜などに発生するがん。アスベストとの因果関係が特に強く、潜伏期間は20〜50年に及びます。

これらの病気は発症まで時間がかかるため、過去の使用による健康被害が現在も続いているのが現状です。

日本では2006年にアスベストの製造・使用・輸入が全面禁止となりました。
ただし、禁止以前に建てられた建物や設備には今も石綿が残っている場合があり、解体や改修の際に飛散防止対策が不可欠です。
そのため、工事前の事前調査や専門業者による除去作業が法律で義務づけられています。

アスベストはかつて「夢の素材」と呼ばれるほど優れた特性を持っていましたが、その代償として深刻な健康被害をもたらすことが明らかになりました。

現在では使用こそ禁止されていますが、過去の建物や施設に残る石綿の管理・調査・除去が引き続き重要です。

アスベストについて正しい知識を持ち、安全な環境づくりに努めることが求められています。